総花的予算配分を今こそ重点式へ◆ 叶わぬ夢と思われていた99年の租借期間が終わり、今香港が元の鞘に収まるという 歴史的事実の中で、悲喜こもごもの情景がテレビに写し出された。そのことによって 人々がどのように見、どのように感じようが、物事の本質はしかし単純ではない。喜 びに沸く香港返還であれ、不承不承の香港返還であれ、これからの世界に、とりわけ これからの日本に、何をもたらすかについて考えないわけにはいかないのだ。 ◆ 私は経済の専門家ではないので、香港の経済力やその影響力をどのように見計らった らよいのかわからないが、大掴みにいって、日本に次ぐアジヤの経済大国台湾とほぼ 同じなのではないかと思う。ならば、中国大陸の一部としての香港は、経済力の面で 台湾と拮抗することが可能となる。その場合、いままでほとんど意に介されていな かった中国大陸の経済力の分だけ、中国は台湾の経済力を上回ることとなる。このよ うな情勢を、“世界経営“に常に意を用いている米国が見逃すはずはあるまい。さら に中国大陸の潜在力に着目するならば、香港返還以前よりも、より中国を重視するよ うになるだろうと考えても、あながち荒唐無稽とはいえないと思う。言い換えれば、 日本の成田空港が上海や北京への一中継空港になる可能性が出てきたといえる。 ◆ 中国は依然として共産主義国家だし、米国が中国に対して持ち続けてきた警戒感ない し違和感が俄かに解消するとは思われないが、しかし米中関係といえども強固な信頼 関係に移行しないとは限らない。同じ意味で、良好だからといって、日米関係に日本 が手放しで安住してよいはずがない。日米関係を良いものにするためには、両国関係 の緊密化推進のために常に心を砕き、それを積極的に具体化していかなければならな い。 ◆ 日付を正確に憶えていないので、10年ほど前のことしか言えないが、日本経済新聞 に興味深い記事が出た。21世紀は「スペ−ス・プレイン」の時代というのだ。「ス ペ−ス」は宇宙、「プレイン」は航空機を意味する英語だから、宇宙機器のような航 空機ではないかと想像されるが、太平洋を越えて日米間を片道2時間で飛ぶという。 それくらいの超スピ−ドで飛ぶのだから、離着陸の際は大地にとてつもない圧力がか かるという。当然、飛行場は強固な地盤であることが要求される。日経によると、日 本における「スペ−ス・プレ−ン」用空港の最適地は、岩手県の遠野市から釜石市に かけての地域で、そこは地盤が岩盤なので理想的だというのだ。 ◆ 私はこの朗報を早速岩手県内の知事や知友に知らせた。ニュ−スはたちまちして遠 野、釜石方面にも拡がった。だがそこまでで、事態はそれ以上に進展してはいない。
ジブラルタル海底トンネル◆ 今日の日本の財政赤字は430兆とも520兆円ともいわれる。この膨大な赤字から すれば歳出抑制は当然の成行きだ。公共事業費、医療費、文教費のほか、福祉関係予 算等まで切り込まれることが必至だ。歳出が細かくなれば、予算編成には思い切った 発想の転換、すなわち総花式から重点式への転換が必要だ。総花式である限り、金の 流れは広く浅くならざるをえない。このことは、事の緊急制をなおざりにして、悪平 等を選択することだ。 ◆ 長い間、私は、ODA(政府開発援助)つくりに熱心に取り組み、JICA(国際協 力事業団)を育てる会のメンバ−だったが、その間どうしても通らなかった私の主張 が、この重点式だった。毎年数多くの人や物におカネを渡す総花式の予算では、実績 にもならなければ評価にもつながらない。日本としては広く浅く行き渡らせたつもり なのに、その実、肝心の困窮している人々の手には渡らず、権力者や特権階級のみを 潤すだけの結果となり、多くの人々の恨みを買うとなれば、こんなにバカバカしいこ とはないではないか。何のためのODAか、だ。 ◆ 重点式を主張してきた私の年来の夢は、ジブラルタル海峡に海底トンネルを通すこと だった。従来の海底トンネルは、「関門」「青函」に見られるように島から島にかけ てか、ド−バ−海峡を潜る島から大陸へのものだったが、ジブラルタルこそは大陸と 大陸を結ぶものだ。旧国鉄で創出、磨きあげられた海底トンネル掘鑿の技術力はド− バ−でも生かされたが、この技術力と日本人の血税が「ジブラルタル海峡トンネル」 を実現したとなれば、歴史に残ること、スエズ運河を開通させたド・レセップスの比 どころではないと私は確信するのだ。アフリカの開発に大きく寄与、人の流れにも新 しい潮流が生じるだろう。 ◆ 私は重点式を国際的な面のみに強調しているのではない。国内的にも、絞りに絞っ て、いまこそ大規模な事業をやるべきなのだ。その典型的な事業が「スペ−ス・プレ イン」開発と就航の具体化だ。 ◆ これは日米両国の共同事業でなければ成就されるものではない。空港設置も一方的で あって何にもならない。「スペ−ス・プレイン」についても、日米両国の技術力と製 造能力ががっちり噛み合う共同開発で行くべきだ。
「スペ−ス・プレイン」開発◆ 敗戦後、日本の航空機産業は壊滅、前途は絶望的だった。その後日本は「YS−1 1」の製造に見られるように、先端的でない航空機なら生産する力を持つに至った が、世界的レベルには未だしだった。航空技術界の重鎮だった故木村秀政博士などの 助言によって、私が心がけ、志したのは、米国の航空機産業という大樹に寄り、そこ で自力を養い、日本の産業を育てることだった。 ◆ 米国の航空機生産に日本が参入した当初、手を染めることなど許されなかった航空機 の心臓部ないし頭脳部分を、いまや日本が分担してやれるようになっている。このこ とは日本の技術水準の高さを物語る実例だが、また一方、安全保障をも意味する。 ◆ 日本に核攻撃が加えられた場合、日米安保条約が締結されているというだけで、自国 が核攻撃に晒されることを覚悟のうえで、米国が日本のために報復攻撃に立ち上がっ てくれると安易に考えてよいものか。 ◆ 大切なのは、米国が日本の側に立って必ず立ち上がってくれると、日本人もその他の 国々の人も、確信する条件を整えておくことにほかならない。 米国産業の“虎の子 “は、航空機、宇宙機器だ。今日先端産業とよばれている電子機器産業でさえ、所詮 は航空機、宇宙機器の裾野を形成する産業にすぎない。日本が攻撃を受けることは、 米国の基幹産業が大打撃を蒙ることにほかならないという条件を整えておくことこ そ、真の安全保障なのだ。 ◆ 「スペ−ス・プレイン」共同開発は、このように日米間の紐帯を一層強め、切っても 切れないより良い関係に昇華させよう。戦後半世紀を経て、高度経済成長も終わり、 新時代に対応する国内体制の整備に意を用いつつある今日、内外両面から見ても一石 二鳥の策と考えて、敢えて提案する次第だ。
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