靴下を履く順序
渡部亮次郎
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靴下を履くとき、実は左を先にするか、右を先にするか、予め決めている
ことに気づいた。しかも左に履こうとして開いた靴下を、いや右にと言っ
ても殆ど不可能である。やってごらんなさい。靴下を履くというのは小さ
な行動だが、そこには小さいながらまず「決意」と「決断」があっての事
だから、傍からやいのやいのいわれても、急に変更することは出来ない。
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だから北朝鮮問題の打開について、田中局長は正常化交渉を先にしようと
「決断」していたのに、拉致問題の解決なくして、正常化交渉に入ることは
相ならん、と世論が沸き立ったとはいえ、もはや靴下の左右の順序を変え
ることが急にはできないように、拉致問題を優先課題にする事は不可能な
のだ。
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また、引きずられる小泉首相と福田官房長官は、拉致問題で田中局長がこ
れほどのチョンボ(失敗)をやらかすとは想像していなかった。たとえば、
生存者たちの写真も録音も取って来ないとか、死亡とされる人たちの年月
日を隠すといったことが、どれほど大きな力となって政府の足を引っ張る
ことになるか。
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選挙で常に首を洗っている政治家ならば、すぐに気づくことが、官僚は理
路整然としていれば、それが国民に受け入れられようが、受け入れられま
いが「正義」だと主張してはばからない。まさに我々からすれば「理路整
然たる非常識」なのである。
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その後、田中局長は、応援の手を差し伸べたアメリカ大統領特使のケリー
国務次官補に対し、報道によれば「アメリカ政府は、拉致問題にこれ以上
深入りしないでほしい」とクギを刺した。すなわち彼は「国交正常化」と
いう靴下を先に履こうと決断していたのに「拉致」と言う靴下を先にせざ
るを得なくなって、非常に焦っているのである。
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かの岸信介首相の孫である安倍晋三官房副長官のことを、成蹊大学の時は
パチンコにしか興味がなかったとくさす人がいるが、ここへ来てご母堂に
受け継がれた岸の血が沸くのか、なかなかの健闘ぶりである。首相に随行
する官房副長官は同行記者団のサービス係と思われているが、今回の平壌
訪問では、首相に「宣言にサインするな」と諫言したという。まこと、歴
史に残る諫言であり、立派である。だからこそ、その後も安倍は田中局長
から邪魔者扱いされている。
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その点、福田官房長官は田中局長とはウマが合うのか合わないのか、邪魔
にされたかと思えば頼りにされたり、要するに賢明に立ち回っているよう
に思えるが、肝腎の小泉首相のことが良くわからない。
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平壌に出かける時は拉致問題の解決なくして正常化交渉は有り得ないと言
っていたし、今もそう言っているけれども、実態はいまや拉致は拉致、交
渉は交渉と別な進み方をするのを認めているようにしか見えない。
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先の内閣改造だって、柳沢を残して竹中を斬るべきところを逆にやって、
不景気をさらに深刻にしている。竹中の言うことは学問的かもしれないが、
実態には合わない。手術は成功したが患者は死んだ、にならないか。こう
なってくると田中局長に良いようになめれているのは小泉以下すべての政
治家であり、事態は田中局長の決断通りにしかならないように思う。