書評 『愛される日本』    宮崎正弘


■なぜこれらの国々はかくも親日なのか 元大使がかたるインドやタイやトルコ、ミャンマーの日本への篤い思い
   
<日本戦略研究フォーラム編『愛される日本』(ワニブックス)>

日本がいかに諸外国から愛され尊敬されているか、台湾、トルコ、インド、タイ、ブラジル、ベトナム、ミャンマーの大使経験者が実体験にもとづいて語る。

世界のなかの親日国家の代表格が、これらの国々であり、くわえてインドネシア、バングラデシュ、スリランカなども加えるべきだろうが、あまり多くなると一冊の単行本として編集上問題があるかも知れない。

ともかく安部外交の神髄は、こうした国家群との「親交強化」であり、それこそが日本外交の「最大の資源」なのだという基本認識が本書の基調である。 

タイに関しては小林秀明元大使が、ブラジルは島内憲元大使が、ベトナムは坂場三男元大使が、そしてミャンマーとトルコは山口洋一元大使がそれぞれを分担し、熱心にその国の特性と親日ぶりを特筆されている。台湾だけは日本側大使ではなく駐日大使だった許世偕(元台北駐日経済文化代表処代表)が担い、台湾人の視点から台湾の親日度を強調される。

このコラムでも全部を網羅したいところだが、紙幅もあり、ひとつだけ、インドを撰んで、平林博大使の文章を紹介したい。

平林大使はインドを理解するには五つの基本事項を掌握する必要があるとされ、第一は人口大国、その国土面積がEUと同じであること。第二に『多様性のなかの統一』という要素。すなわち言語、宗教、民族、風俗習慣、歴史が異なる28の州(現在は29州)が合邦し、『統一されている』という事実の重大性をあげる。そして第三に『世界最大の民主主義国家』であるという事実。第四が伝統的に親日国家であること。第五はインドの、地政学的戦略的重要性である。

インドの政治は政教分離である。

最大のヒンズー教は「昔のバラモン教から深化した」宗教だが、紀元前五世紀にブラマン教の改革宗教として誕生したのが仏教とジャイナ教だった。しかし仏教はインドを離れ、世界宗教となるが、ジャイナ教とヒンズー教はインド亜大陸にとどまった。

独特のターバンを巻いたシーク教はヒンズー教徒イスラム教を融合させて十六世紀初頭にパンジャブで生まれた。

こうしたインド生まれの宗教が日本にあたえた影響は計り知れない。

とくに仏教が最大と考えられるが、じつはヒンズー教の日本へもたらした影響も大きく、雷神のインドラは帝釈天に、『宇宙を創設するブラフマ神、宇宙を維持するヴィシュヌ神、堕落した宇宙を破壊してブラフマ神に繋げるシヴァ神はそれぞれ梵天、多聞天ないし毘沙門天、大黒天になりました。ブラフマ神の妃であるサラスワティは弁財天、ヴィシュヌ神の妃ラクシュミは吉祥天』になっている。

そしてインドの独立戦争を支援した日本への感謝の念をインドの人々は忘れることができないという厳然たる事実も日本人のほうが忘れている。

日露戦争に勝った日本の輝かしい歴史を語ったネルーの『娘に語る世界史』のなかの日本の項目は、いまもインドの教科書に載っている、それがインド人の親日度に貢献していると平林元大使は結んでいる。

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