地球防衛

安田 紀夫

 11月17日夜から翌日未明にかけ、しし座の流星群が32年ぶりに眺められそうだという。今年2月に回帰してきた母すい星のテンペル・タットルが撒き散らしたちりに遭遇するためで、前回は1966年、米国西部で1番よく見え1夜で15万個の流星が観測された。うまくいけば今世紀最大の天体ショーとなる。

今回は日本が観測に適地とされているので期待は膨らむ。流星なら大気圏で消滅するからまだいいが、ときどきいん石となって地上まで達する厄介ものがある。92年暮れ、美保関町の民家の屋根、床をぶち抜いて重さ6`cを超えるいん石が飛び込んだ。2年前には茨城県・つくば市でも落下騒ぎがあった。いん石は年間、2万個近く落ちてきているという。どうも地球は宇宙空間に対し極めて無防備で、10万年とか百万年といった長い期間でみるととんでもない「訪問客」がやって来る可能性があるらしい。

 子供のころ見た映画に「空気のなくなる日」というのがあった。76年の周期でハレーすい星が地球に接近してくる。明治時代に姿を現わした時は、長い長い尾が中空を横切り不気味な印象を人々に与えた。映画はそのときを舞台にしたもので、うろ覚えの記憶を手繰り寄せてみると、地球がすい星の尾(ガス)の中を通過する。その間、数分間空気がなくなる。そんな情報が広がる。

どうやってその時間を堪えるか。人々は自転車のタイヤを必死で買い求める。チューブの中に空気を入れておき、これを吸って凌ごうと狂奔するのだ。話は喜劇的だったが、ハレーすい星の不気味さだけがいつまでも脳裏に焼き付いている。このハレーすい星、1986年に再来したときは楽しみにしていたのだが、残念ながら全然見えなかった。むしろ、そのあとに現れたヘール・ボップ、百武両すい星の方が素人にも観測できた。


直径1`bで人類絶滅


すい星や小惑星が地球に衝突したらどうなるか。1980年に米国のノーベル賞学者が6千5百万年前の恐竜の消滅を巨大いん石の衝突による環境の激変のせいだ、と発表したときは学者の間でも首をかしげる人が多かった。ところが、約10年後にメキシコのユカタン半島で直径10`bぐらいの小天体の衝突の跡とみられる巨大なクレーターが探知されて、この説はにわかに真実味を帯びてきた。衝撃で噴出した巨大な量のちりが地球を覆い寒冷化、数年続くうちに食料がなくなり絶滅したというのだ。

そんなことが本当に起きるのか。クレーター発見から間もない94年、シューメーカー・レビー第9すい星が分裂した状態で木星に激突した。長く伸びた21両編成の列車のような形で4日間にわたって次々と木星に突入。そのもようは逐一報道されたから、覚えている人も多いだろう。地球を包み込む規模の噴煙が上がっている。2千年に1度ぐらいの確率の天変地異らしいが現実に起きてみるとびっくりする。われわれも警戒が必要だ。

地球接近小天体、英語のニア・アース・オブジェクトを略してNEOと呼んでいるが、これをきちんと観測して不測の事態に備えようという動きが活発化。米国でも日本でもスペース・ガード協会が相次いで結成されている。米航空宇宙局(NASA)も観測網を強化した。だが体制はまだ不充分という。人類に破局的影響を与えるのには、恐竜を絶滅させたといわれる直径10`bまでいかなくても直径1`bで十分と専門家はいう。

NEOはわかっているだけで120を数えるそうだ。最近、ショッキングな米SF映画が封切られた。「ディープ・インパクト」。新発見のすい星が1年後、地球にぶつかることがわかり人類は「破滅」の危機に。「その時」スクリーン上では核兵器が活用され、かろうじて破局を免れるのだ。何千年、何万年に1度起きるかどうかといった事態だろうからそう心配する必要はないのかもしれないが、「その時」に備えて地球防衛のシナリオぐらい準備しておいても良いのではないだろうか。(註)山陰中央新報コラム「羅針盤」=98年10月25日付け=