リバース・モーゲージ 

安田 紀夫

夏の終わりごろ、大売出しのチラシを手に何軒か家具屋さんを歩き回った。頃合のテーブルを探していた。実を言うと、何年か前から定年退職した友人夫妻と月に一、ニ回、家庭マージャンをしている。その昔、記者クラブでチャガラなどという点棒不要の品のないマージャンをしていたのに比べれば、まるでうそのような話である。

ばくちではなくて、家庭サービスになってしまった。このゲーム、ちょっと長引くと腰が痛くなる。座卓からテーブル、椅子に切り替えようと適当なテーブルを探したのである。秋の婚礼シーズンを当て込んでの売り出しだが、どこも閑散としていた。当節、晩婚、晩産化の傾向顕著、しかも景気が悪く、住宅建設も低調となれば家具の商売も大変だろうと推測しながら何年か先、人口が減り始めたらどうなるのだろうかと人気のない店の中で変な想像をしてしまった。

 厚生省の推計によると日本の人口は二千七年に一億二千七百七十八万人に達すると、あとは減少していく。いま百二十万人前後生まれて約九十万人が死んでいるというのがこの二、三年の傾向で、かつては二百万も出産があったのが考えられないような時代である。あと十年ぐらいは人口は増え続けるが、増えるのは高年齢層ばかり。少子化と並んで高年齢化にどう対応していくのか。

いま、ひとびとが先行き不安から財布のひもを締めているというだけでこれだけのデフレ現象だ。人が減り始めればそれどころではなくなる。ものの消費も確実に減っていくのだ。将来の年金負担が増大するなどと危機宣伝ばかりしていないで、どうやってこどもを生みやすい環境を作っていくか、少子化対策を打ち出して実行に移すべき時期ではないかと思う。もう、あまり時間はないのだ。


老後の暮しの選択肢を


 もう一つの高齢化対策だが、そのなかで政府や自民党が検討を始めたリバース・モーゲージが有効ではないかと思う。これは高齢者の持つ土地、家屋を担保にして一定の年金などを支給していこうという制度である。別名「持ち家担保年金制度」。米国などで既に実施されているが、日本では東京・武蔵野市を始め十以上の市町村が採り入れている。不動産取得のローンとは反対に、家屋敷を担保に融資を受けて使ってしまおうというのだから逆(リバース)抵当(モーゲージ)というらしい。

例えば時価の八0%程度を上限として、その範囲で毎月年金として受け取っていき、夫婦の死後、持ち家を処分して清算するのである。なにしろ多くの高齢者は年金を主たる生活の資金源にしているのだろうから、仮に退職金などが蓄えてあっても、先のことを考え簡単に使うわけにはいかない。病気、お金は老後のもっとも心配のタネだからだ。そこでこんな形で新たな年金をもらえるとなれば、老後の心配が幾分かでも減ることになる。いわば第三の年金である。豊かな老後への方策の一つとして極めて意義があるのではないか。

景気対策という一面はどうか。不動産はストックの状態で消費とは当面、無関係である。それを活用して、前倒しで現金化して使っていくわけだから景気刺激の一助にもなろうというものだ。そんな形でお金が使えるとなれば、元気なうちに夫婦で海外旅行にでも行こうかという話になるかもしれない。

問題はいまの不況のなかで、不動産価格が下がりっぱなしで担保割れのリスクが高いこと。事実、これまでの先行自治体でもこのケースが起きている。こうした場合に備えて保険によるカバー体制整備なども考えなければなるまい。

そのために国が音頭をとって財政的手当てをし、本格的導入に道を開くのが望ましい。むろん、こうした考え、制度を無用と退ける人もいるだろう。しかし、老後の暮しの選択肢が、一つでも増えるのは良いことだと思うのだけど。